芥川賞受賞『コンビニ人間』感想 「普通に生きる」は難しい

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コンビニ人間 レビューアイキャッチ

今回は、第155回(2016年)芥川賞受賞作品「コンビニ人間」を紹介します。

賞を受賞した作品を読みたかった事と、意外と短いお話だったのでこの本を読みました。

「コンビニ人間」ってどういう意味なんだろう。

コンビニのイメージ→いつでもどこでも欲しい物が手に入る。

そういう平凡な人間の事?と推測して読み始めました。

予想に反して、主人公「普通じゃない人間」が、「普通な人間」な模倣をして「コンビニ人間」に生まれ変わるお話でした。

難しいけど、クスっと笑えますよ。

このお話のあらすじを紹介していきます。

著:村田 沙耶香
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目次

書籍情報

著者:村田沙耶香(むらた さやか)

出版社:文藝春秋

出版日:2016年7月27日(文庫本)、2018年9月4日(単行本)

竹森ジニーの英訳により、2018年にアメリカとイギリスで出版され、約30言語で翻訳されている。

バラエティ番組「アメトーーク!」の「読書芸人」の回でピースの又吉直樹さん、オードリーの若林正恭さん、オアシズの光浦靖子さんの3人が紹介されていました。また、バラエティ番組「お願い! ランキング」の書籍を紹介するコーナーで、カズレーザさんが絶賛していました。

著者情報

村田 紗耶香(むらた さやか)

1979年8月14日生まれ。小説家、エッセイスト。玉川大学文学部卒。10歳の時に執筆を開始し、執筆しているときだけ自分自身を表現し解放することができるようになったと感じていた。大学時代、周囲の人間から、金持ちの結婚相手を見つけ出産について考えなければいけない、と言われ、何のために大卒資格を取るのかとショックを受けたという。10代から20代にかけて、世間が期待する可愛い女性を演じようと努めるも、それは「恐ろしい経験」であったという。

デビュー作 『授乳』(2003年)

受賞歴

  • 2003年、『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞受賞。
  • 2009年、『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補。
  • 2009年、『ギンイロノウタ』で第31回野間文芸新人賞受賞。
  • 2010年、『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。
  • 2012年、『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。
  • 2013年、『しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。
  • 2014年、『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。
  • 2016年、『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
  • 2016年、VOGUE JAPAN Women of the Year 2016
  • 2016年、第3回Yahoo!検索大賞 パーソンカテゴリ 作家部門賞

引用文献 Wikipedia

たこぴい

著者も実際にコンビニでバイトしていたそうですよ。

YouTube 文藝春秋 村田沙耶香さん『コンビニ人間』 芥川賞受賞記念インタビュー

あらすじ

主人公の古倉恵子は、18年間コンビニのバイトをしている36歳。これまで彼氏なし。オープン当初からスマイルマート日色町駅前店で働いている。毎日の食事もコンビニで買った物をとり、レジ打ちをする夢もみる。

コンビニ店員として生まれる前のことは、どこかおぼろげで、鮮明には思い出せない。郊外の住宅地で育った私は、普通の家に生まれ、普通に愛されて育った。けれど、私は少し奇妙がられる子供だった。

本文より抜粋

彼女は幼いころから、感情が希薄で周囲に奇妙がられていた。公園で小鳥の死骸が落ちていた時には、「持って帰って焼き鳥にしよう」と言って、母親や大人たちの目を丸くさせた。小学生の頃は、教室で男子が喧嘩を始め、喧嘩を止める一番手取り早い効率的な方法として、スコップで男子の頭を殴り喧嘩を止めた。両親はなんとかして彼女を「治す」ように働きかけるが、彼女は自身の異常さがわからない。彼女は次第に寡黙になり、皆の真似をするか、誰かの指示に従うだけの人間になる。「治らない」自分にとってはそれが一番合理的な処世術だった。「普通」とされる人間を擬態することで世の中に生存している。

ある日、白羽という三十五歳の男がアルバイトに入ってくる。彼もまた明確な社会不適合者。彼は、男としての社会的役割を果たし他人に馬鹿にされることを避けたい、彼女は親族や古い友人たちによる就職し、結婚し、子どもをもつのが当たり前という価値観の押しつけをかわすために、白羽を自宅に飼うことにする。

コンビニ店員

ポイントと考察

「コンビニ人間」という処世術

古倉さんは、完璧なマニュアルの存在するコンビニでマニュアル通りに働きます。彼女は経験から学んだ音やお客の動きで次の動きを予測して行動することができます。しかし、相手の感情を読み取ったり空気を読むといったことは出来ません。

これだけ完璧な仕事ができれば有能なコンビニ店員ですよね。かなり凄いと思います。私はコンビニで働いたことはないですが、友人がコンビニでバイトしていて、コンビニは覚えることも多く仕事量も半端ない!と半年ぐらいで辞めてました。

彼女は自分が「普通ではない」と認識してはいますが、どこが「普通ではない」のかは理解できていません。そんな彼女は処世術として、周囲の「普通の人」の表情や口調を真似る術を身につけます。周囲が怒っている時には、自分も怒っているふりをすれば周囲のひとは喜んでくれるので「普通の人」になれます。コンビニで身につけた処世術で繕った自分が「コンビニ人間」なのでしょう。

私も、空気を読めなかったりしてその場の雰囲気を壊してしまうこともあります。なんとなく周囲の顔色うかがって、できるだけ皆と同じになるように動いていると思います。

差別するひとには2種類

・差別への衝動や欲望を内部に持っている人

・どこかで聞いた事を受け売りにして何も考えずに差別用語を連発している人

本文より抜粋

まっとうでない人間は処理される

社会生活でうまくやっていくために妹がアドバイスをしたり、学生時代は寡黙にして目立たないように過ごしてきた彼女が「コンビニ人間」になり、地元の友達は昔より明るくなったといって彼女が「普通の人」であると認定します。古倉さんは誰にでも正直に自分の考えを話し、何も恐れずにいつも自分をもっています。この彼女の軸のしっかりした所は非常に魅力的に感じます。

やがて、就職し、結婚し、子どもをもつのが当たり前、そのほかの異物はみとめない考えを知ります。

正常な正解はとても強引だから異物の私は静かに削除される。まっとうでない人間はしょりされていく。そうかだから直らないといけないのか。

本文より抜粋

白羽との同居生活

この店ってほんと底辺のやつらばっかりですよね。コンビニなんてどこでもそうですけど、旦那の収入だけじゃやっていけない主婦に、たいした将来設計もないフリーター、大学生も、家庭教師みたいな割のいいバイトができない底辺大学生ばっかりだし、あとは出稼ぎの外人、ほんと、底辺ばっかりだ。

本文より抜粋

白羽さんは30代半ばでフリーター、恋愛経験なし。気に入った女性に出会うための婚活としてコンビニのバイトをするという。強いオスが優れたメスを手に入れるという点において現代社会は「縄文時代」と変わらないという持論を持っています。与えられた仕事を途中で投げ出す、上から目線で人を見下す、注意されると悪態をつく、勤務時間中にサボる。なかなかの社会不適合者です。

彼は社会の仕組みや正常な生き方を非難し、でも自分も起業すればうまくいくと自意識は過剰です。

社会的役割を果たし他人に文句言われない生活、相手に寄生して楽に生きたい白羽さん。

自分が異物として周囲に見られたくない古倉さん。

この2人の考えは全く違いますが、「結婚」と「就職」こそが社会と正しく繋がることでありと考えは共通しています。

そこで古倉さんは白羽さんに「婚姻届」を出しませんかと提案します。彼女は「ムラに必要のない人間は迫害される。「普通の人間」皮をかぶってふるまえばムラから追い出されることはない。マニュアル通りに振舞えばコンビニ店員としてコンビニに居れる。みんなの不思議がる部分を消去しいていくことが「直る」ということなのかもしれない」と考えたのです。そこには恋愛感情は全くありません。お互いの利害関係のためだけの同居です。

彼女は家に動物を飼っている感覚で白羽を迎えます。

私は『コンビニ店員』という動物

白羽さんを飼い始めた古倉さんはお金が必要になるし、周囲のためにも古倉さんはコンビニのバイトを辞めて就職する事にします。コンビニのバイトを辞めて2週間、爪も伸び、3日に1回しかシャワーも浴びず、昼夜の感覚も忘れるほど無気力な古倉さん。

面接前に入ったコンビニで古倉さんのコンビニ魂が復活します。聞こえてくる音が古倉さんの細胞に呼びかけます。頭で考えるのではなく本能でコンビニ店員になることを感じます。

体の中にコンビニの声が聞こえてきて、止まらないんです。わたしはこの声を聞くために生まれてきたんです。

本文より抜粋

「普通の人間」に擬態する事を辞める決心がついたのでしょうね。

ツイッターでの声

Twitterから引用
Twitterから引用
Twitterから引用

まとめと感想

「多様性」という言葉で寛容になってきたような今日ですが、「いい会社に就職し、結婚し、子どもをもつ」という「普通の人間」というムラの掟。それ以外の人は異端であるような社会のルールが定まってしまっている気がします。その社会の中で教育を受けて育ってきた私たちは知らず知らず異端を排除しようとしているのか知れません。

家族を安心させるために、コミュニティに異端と見られたくないために「普通の人間」に擬態していた古倉さんですが、それでも「コンビニ人間」としてこの世に生を受けたと自信をもっていえる古倉さんの強さに尊敬します。

私も居づらい空間や居づらい人がいます。そこで相手に合わせて「普通」であるように振舞うか、そこから離れるかの選択肢があるのでしょうが、私も古倉さんのように擬態することを選んでいると思います。そういった点でも共感できる作品でした。

自分の得意を見出し、天職に出会えるなんて羨ましいとも思いました。

自分の存在意義について考えさせられました。

さすが芥川賞、ぜひ読んでみて下さい。

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私はAudibleで聴きました。大久保佳代子さんの朗読ですよ♪

こちらの記事でAudible紹介しています。

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